例の財産の半額を遺族二人に渡したアルフレート。
これでアルフレートはかなり肩の荷が下りたように思えます。
それを思うにつけ、原作のアルフレートの懸念はいかばかりだったか…と思います。
あの厄災の種を残してこの世を去るということが、どんなことを引き起こすかは十分自覚していたと思います。
(そしてまさに最悪の事態になった)
そしてユリちゃんから真実を知らされた時点で、ヘルマンに会っていないレナーテさん。
もちろんレナーテさんに何の非もない。
でも「ヘルマンに会わす顔がない」と思うのは当然かな…と思う。
ヘルマンはというと、再びレナーテさんの手を取った時から、もう自分の中で心の折り合いをつけていたと思うけれど。
そんな二人(というかレナーテを)後押しするユリちゃん。
手を伸ばせば愛する人に届く幸せ、今一緒にいられる幸せがどれほど素晴らしいものかというのを彼女は身に沁みて分かっているから。
大事な人の背中を優しく押してあげるユリちゃん。
今まではユリちゃんの青い初恋のサポートを陰に日向にしていたレナーテさんでしたが、いつの間にかそんな娘が自分と対等に愛を語れるようになっていたのに気付き、それは感無量だったのではないかと思います。
そして第五章。あのお金の使い道を報告に来たヴィルクリヒ先生。
原作ではフレンスドルフ校長はヘルマンに対して祖父の名乗りを上げていなかったけれど、
こちらでは祖父と孫として互いを認識しております。でも原作でもヤーコプなんかは薄々フレンスドルフ校長とヘルマンの関係を気付いていた節がある。。。ように思えます。
アルフレートとの語らいで、ちょっとその後のイザーク周辺が語られておりますが、こちらもおいおい書いていこうと思っております。
原作のモーリッツは、自分の周りにイエスマンしかいなくてまるで小さな王様のようでした。
でもこちらでは対等にズケズケものを言い、しかも女の子だから手をあげる訳にもいかないので学友のように意のままにならないけむたい存在=ユリちゃん がいるので、そこで化学変化が働き、モーリッツとそれから原作ではモーリッツのエゴに翻弄されていたフリちゃんの運命もまた微妙に変わって来るのではないかな~と。
フリデリーケちゃんを療養させるには慈善事業という建前があったにしても、カタリーナさんの両親を納得させる条件は満たせなかった、と思います。所詮お嬢様の我儘みたいな。これで彼女は周囲を欺く為には納得させる術を身につけ、ウィーンへと旅立つのですから。このお嬢様は頭が切れる、というか、本当は何があっても目的を完遂する実に強かな女性に変容していくのですから。いい意味現実的な女性です。今の時代なら確実に女性の位置を高めるシンボルとなり得る先駆者でしょうね~。
こういうことはユリパパのような剛毅な性格と立案可能な周囲を納得させる頭脳の持ち主でなければ無理かなぁ 娘の未来の婿として援助するという選択もチョイと…周囲に匂わせ。韜晦に長けたユリパパ程の迫力のある説得ならば、ユリちゃんに恋心を抱いていることも関係して、イザークは音楽家として大成しユリちゃんに愛を告げようと頑張る、かも。ユリちゃんはしかしながら眼中にないけれども。
今回の陰の主役はレナーテさん。陽光を歩むことのできなかった彼女の前に光の径がある。
彼女を巡る二人の男性の真摯な愛が見事に昇華されています。敵同士の二人が過去の苦い記憶を乗り越えて、互いを思いやることが出来た奇跡のような挿話で、その厳かさに心動かされました。
怨讐を忘れ未来に生きる…ヴィルクリヒ先生らしい生き方です。レナーテさんとは結婚という形に捉われない愛を選択しますが、その後子供が産まれる未来があるかも。いや、そういうことはユリちゃんの為にならないので潔く諦めるか。しかし、あの負の遺産が【エレオノーレ基金】として未来に託され、希望の光となることで、祖父も流した数々の涙をいつかいつの日か癒すことができるでしょう。。。。
イザークも当然フリデリーケちゃんもこの世界では幸せになる。そしてモーリッツも自分が如何に子供だったかを自覚し大人への階段を昇り始めました。ユリちゃんは既に大人の淑女さんですから負けず嫌いのモーリッツも負けてはいられません。素晴らしかったです!