ご無沙汰しております。
Side linも前半四分の一ぐらいまで漕ぎつけました。。
結構順調に進んどります。引っ越し作業。
結婚相手の国で人生の第二章を送っているヴェーラの嫁ぎ先逗子での日常を綴った「書簡」。
そして手紙と共にヴェーラがリョーニャに贈ってくれたお人形さんに纏わるエピソード、
「フジタさん」「ユリとジャスミン」。
ユリウスがしたためたヴェーラの手紙への返事の「返信」。
ヴェーラの新生活が窺える「書簡2」「intermezzo ~星まつり」。
『オルフェウスの窓大辞典』ではヴェーラは死んでしまった…と書かれておりました。
その結末に至るまでの詳しい経緯は全く記されていなかったので、彼女の人生を幸せではなかった と決めつけるのはなんですが・・・・あまりに幸せと縁が薄いように思えました。
真摯に真面目に人生を生きていた彼女・・・。恋人を失い、故国での地位身分を失い、家族を喪い、国を失った。。。
あまりに失うものが多すぎる人生の第一幕に…ちょっとやるせない思いを抱きました。
そんな思いが、このエピソードに繋がったように思います。
きりっとしていて聡明なヴェーラなので、職業婦人の道も十分にあったと思いますが、リュドミールやユリちゃんの世話を親身に焼いていたところからも、家庭の奥様として家族に厚い愛情を注ぐ人生も大いにありだな と思いました。
「フジタさん」「ユリとジャスミン」の二篇は、ヴェーラが贈ったお人形が縁で、大人気画家藤田嗣治(レオナール・フジタ)と親しくなったエピソードでした。
ユリちゃんと同世代(1886年生まれ…だったかな。確か)で同時代に同じ街で人生を送っていたフジタ。そして時代の寵児だったフジタと当時の芸術文化の発信元の一つであったシャネルのメゾンで働いていたユリちゃんは案外近い所にいたように思えます。
作中でフジタが口にしていた人形の作者「光龍斎」。
滝沢光龍斎は大正~昭和期に活躍した人形作家で、日米親善のために昭和2年にアメリカから日本へ贈られた青い目の親善人形の答礼人形の作家の一人として名を連ねております。
作風はあどけない愛らしい顔立ちが魅力で、幼子のぽわんとした表情が何とも愛おしいです。
市松人形は作家さんによって顔がかなり違って、この光龍斎のように童女のあどけない表情を良く写した顔立ちや、かなり美人よりの顔立ちの子まで、個性豊かであります。
光龍斎は男の子のお人形もとても愛らしい。

光龍斎のお人形。これは徳川正子様(尾張20代目当主正室)愛蔵。
さすが華族のお姫様の遺愛のお人形なだけあって、お召し物も素晴らしいです。
「返信」でユリちゃんはフジタさんが撮ってくれた自分たちの写真と共に、自分とリョーニャを描いたフジタさんのデッサンも送っているようです。
これ・・・・後年吉永家のご子孫が発見したら大騒ぎになるんじゃないかしらねぇ。
フジタの未発表の習作が逗子の一般家庭から発見!と。
そして「書簡2」と「星まつり」。
ヴェーラと彼女の新しい家族との日常を描いております。
七夕祭り・・・日本の初夏を彩る抒情的な行事でありますが、ロシアも含む北欧諸国には「夏至祭」というお祭りがありますね。
初夏を祝う日本のお祭りに、故国の懐かしい初夏の祭りの事も思い出したりしたのかな。
ヴェーラとヒロサンの前に姿を現した黒い大きな揚羽蝶は。。。。?
レオ様はきっと男子のリュドミール以上に妹のヴェーラのことを気にかけていたのではないかあと思うのです。
聡明な彼女はきっと諸事抜かりなく自分の託したことを果たしてくれる。
それは信じていたと思います。
だけど一人の女性として一人の人間としての今後の彼女の幸せについては…多少ならずも心残りであったのではないかな~と思います。
自分の妹だったために、ユスーポフ家の息女だったために負った悲しみや大きな責務もあったことですし。
黄泉の国から妹の幸せな様子を時折覗き見て満足していたのではないでしょうかねぇ。
こんばんは! お久しぶりです。
> きりっとしていて聡明なヴェーラ
オル窓女性陣の中で人気の高い女性は、ヴェーラとマリバラ姉様ですね。ヒロインのユリちゃんは除きますと、まあ、当然の結果かな。二人とも聡明で家族に愛を注ぎ、自立心溢れる憧れの存在でした。
ドレスの趣味も良かったですね。
>『オルフェウスの窓大辞典』ではヴェーラは死んでしまった
この部分で衝撃を受けたのは私だけではない筈…。ヴェーラはユリちゃんの身を護るたけだけに存在させた人物だったのか、アナスタシアとユリちゃんを逢わせる駒として登場させ、あまつさえ、革命家のハンサムゲオルギーに利用されるだけの人物だったとしら…不条理でとても哀しかった。。。
ユリちゃんをレーゲンスブルクへ無事に帰郷させ、その任務を全うさせてこそ、彼女の人生は輝く。
ロシアから亡命しパリに逃れ、そして遥か日本へ嫁ぎ。変わりゆく故国ロシアの行く末を見据え、妹のように庇護したユリちゃんの行方を案じ、パリへ書簡といちまさん人形を贈り、そしてまた、彼女は新しい家族を得た。これこそ、ヴェーラに相応しい幸福な生活です。波瀾万丈な半生を過ごし、異国では
生活環境の違いからたゆまざる努力の連続だったと思う。それでもユリちゃんを気にかけ人形や人形のお道具類という細々としたものを手ずから誂えて贈ってくれた。それを最愛の兄・レオ様が見守っていてくれた…素晴らしい小話の数々。人の魂は蝶に姿を変え、慈しむ人の前に顕われるといいますが、黒い揚羽蝶となって妹ヴェーラの見守り続けるのですね。
そして、このヴェーラが日本から贈った人形とレオナールフジタ画伯が繋がり、このエピソードが素晴らしかったと、ある作家さんの感想がブログに掲載されるのですから。読んでいて感無量でした。